「よーし、んじゃ作るでござる! まずは……」
本を見ながらたどたどしい手つきでハンバーグを作ることになった。
「お、おい……大丈夫か? っつーか本見ながらかよ……」
「玲司、そこに牛乳入れないと……」
「ホントに作れるのかねぇ?」
「生は勘弁してもらいたい」
「僕、帰る」
「ちょ、ちょっと待ってよ、帰らないで!!」
玲司お手製ハンバーグの噂を聞きつけ、6畳一間の部屋にホストが6名集っていた。
元々竜崎だけだったはずが、スーパーで会った天祢、無理矢理呼んできた香希にマコト、
電話で呼び出された涼が、玲司ハンバーグの行く末を見守る。
「うっ……目、目が……!!」
「ぎゃはは、玲司泣いてやんの!」
タマネギを切っていた(決してみじん切りなどではない)玲司の視界がゆらぐ。
それを見ていた天祢はしびれを切らして立ち上がるが、その腕を竜崎が掴む。
「玲司の手料理を食うんだ、店長はじっとしてた方がいい」
「け、けど……あんなでかいタマネギを混ぜるなんて、私としては許せないんだが……」
「天祢さん、いいじゃないですか。あいつなりに一生懸命なんですから」
「バカみたい。言っておくけど僕はハンバーグしか食べないから。違う物が出来たら食べないからね」
きついマコトの一言が玲司をより一層緊張させた。
たどたどしい手つきでハンバーグを作っていく。
見た目“それ”は、“それらしい”ものに見える。
「おっ、あとは焼くだけか?」
「話しかけないでっ!!」
「生焼けだったら……殺しちゃうかも」
「ひっ……」
緊張にプラス脅しまでされ、玲司はそれでもハンバーグ作りをなんとか完了させる。
「ふーっ、あとはフタをして……と。最初は中火で……ねぇ、中火ってどのくらい?」
「中ぐらいの火ってことだろ?」
「んなモン適当でいいんじゃねーの?」
と無責任な発言の涼。
「じゃあ適当でいっか。えーっと、中央をくぼませて……これでいいのかな。よしっ、点火するでござるっ!!」
そして部屋中にいい匂いが立ちこめる。
だがそれはやがて異臭へと変わっていった……
「玲司、火が強すぎない?」
「焦げてるって!」
「え? あわわっ……!!」
真っ黒になる手前でなんとか助かったハンバーグ達。
中火で40秒どころか、強火で数分も焼けば、さすがに焦げる。
そして……やっと皿に盛りつけるときが来た。
2008年5月22日木曜日
河合荘クライシス 第四話
2008年5月14日水曜日
はじめまして、播野です!
こちらのブログでは始めまして!
D3Pプロデューサーの播野です。
今後のラストエスコートシリーズの担当となりました、どうぞよろしくお願いします。
さてさて、先日高木Dよりご報告がありました、「SweetPrincess」増刊第三号掲載のSSですが、再度掲載される運びとなりました!
初夏らしい内容を予定しておりますので、どうぞご期待ください!
2008年5月10日土曜日
河合荘クライシス 第三話
「玲司じゃないか。一人かい?」
駅前スーパーで声をかけてきたのは天祢 一星。ゴージャスの問題児達を束ねる店長である。
「あ、天祢さん。んと……竜崎さんと一緒に買い物に来てるんだけど……」
と辺りを見回すが竜崎の姿が見あたらない。
「直夜と? これはまた珍しい組み合わせだねぇ。そのカゴの中身から察するに……さては芹香ちゃんに買い物を頼まれたかな?」
「実はこれから料理を、と……」
「誰が?」
「おれが……」
「ははは、玲司も冗談が上手くなったなぁ」
「うっ……」
少なくとも天祢は玲司が台所に立つ姿は想像できなかったようである。
そして自分が作るのだと言うと、目を丸くして言った。
「その材料からして……もしかして餃子? 玲司が?」
「違うよ、ハンバーグ!」
「ハンバーグにニラは入れないと思うけど……」
「ニラ? あ、あはは……ニラハンバーグでござる! あっ……そうだ、天祢さんも食べに来てよ!」
「い、いや、私は……」
「そう言わずに! ね?」
遠慮したいがそうはさせてくれなかったようだ。
断り切れない天祢は玲司のハンバーグメンバーに加わる。
「ありゃ、何でまた……」
二人の姿を見て竜崎が声を掛けてきた。両手にビールとつまみを大量に持って。
「やぁ、直夜。玲司がハンバーグを作るんだって?」
「作れるらしーから期待してるんだが……天祢さんもどーだい? 今日はマコトも香希も河合荘にいるみてーだから、あいつらも誘うつもりだし」
「今玲司にも誘われたところだよ。そうか、作ったことがあるなら期待してもよさそうだね?」
「作ったことがあるわけじゃ……と、とにかく! 期待するといいのでござる!」
「はいはい、楽しみにしておくよ」
この中で一番不安に思っているのは、ハンバーグを作る本人だけのようだ。
芹香が作っていたのを見ていたから自分にも作ることが出来る……と最初は思っていたのだが、その記憶もすでに曖昧になっているとは言えない。
そして精算を済ませると、三人はスーパーを出て河合荘に向かった。
<つづく>
2008年5月9日金曜日
2008年5月4日日曜日
書き下ろしショートストーリー
まだ少し先ですが、